名優が名優を育てる。
今回は「レインマン」を取り上げました。サヴァン症候群の兄レイモンドと、悪童的な弟チャーリーの心の交流を描いたロード・ムービー。映画ファンなら、誰でも知っている名作です。今さらストーリーについて触れる必要もないと思いますので、私の思うところを少しお伝えしたいと思います。
この作品は1989年製作のアメリカ映画で、主演したダスティン・ホフマンは1990年に二度目のアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
彼がこの賞を受賞できたのは、弟役のトム・クルーズの好演が大きかったのは映画を見れば明らかですね。ホフマンの徹底した役作りを間近で見たトムは、大いに感化されて演技派として目覚めた、といわれるほどの評価を受けたことに、納得できますね。
あれ?映画ポスターと実写映像が違う。
このことにお気付きになった人は多いと思います。私は映画ポスターを見て、面白そうだな観てみようと思って映画館に入った一人です。弟チャーリーが、兄レイモンドを強引に施設から連れ出すシーンを観て、あれ?ポスターと違うとすぐさま感じました。
次のイラストに違いを描きました。ポスターのホフマンは毅然として歩いています。実写は右側イラストのとおり、首を傾げて不安そうにチャーリーについていきます。
なぜこのようなポスターを制作したのか?私なりの推測ですが、「製作者は、映画を観る前の観客に、余計な先入観を与えないようにしたのではないか」ということです。
名優ダスティン・ホフマンが主役、題名のレインマンとは何者。まだサヴァン症候群という障がいがあまり認知されていない時代です。内容は予想外という思いを観客に与えるためだったのではないか?
私の勝手な推測です。
別れを惜しむ兄弟のシーンを描きました。この場面ですでに涙する観客がいたことを思い出します。
もう一つ余談を。
映画の企画が持ち上がった時、ホフマンは弟役として、ジャック・ニコルソン、ビル・マーレ―などを挙げていたそうです。それがなぜ25歳も年下のトム・クルーズに決定したのか経緯はわかりませんが、トムの好演もあって映画史に残る名画となったことは間違いありません。
でもジャック・ニコルソンが弟役とは、想像してみることも面白いし、出来上がった作品は全く違った映画になっていたでしょうね。
ダスティン・ホフマンの迫真の演技によって、サヴァン症候群という障がいを、世に広く知らしめたことからも秀逸な映画だと言えます。